マンション価格の高騰と2024年問題
不動産価格の高騰はいつまで続くのか…?
もはや週に1度は質問される無いようになってきましたが、今回は、不動産の中で「土地」と「建物」を分離して考えて解説いたします。
不動産価格といえば、土地の地価とマンション価格が同じように動いているように思われるかもしれませんが、これらは方向性で一致しているように見えても、同じ比率ではありません。
もっと言えば、真逆に動くこともあります。
それは、需給バランスとマインドで動く相場商品の土地と、そもそも原価があって「材料+工賃+利益」という構成がはっきりしている建物では、その価格変動の理由が全く違うからです。
そして、現在は建物価格が高騰しているために、価格の過半を建物代が占めるマンションの価格が高騰しています。
マンションは、土地の持分が小さく、建物は木造戸建よりも建築費が高い鉄筋コンクリートで作っていますから、同じ価格の80㎡3LDKの住宅でも建物比率が高くなります。
では、建築費の高騰理由を考えてみましょう。
・資材の高騰→中国不景気やロシア侵攻による原材料高、半導体不足、原油高、円安など
・人件費の高騰→政府主導の賃金上昇、高齢化による建設業従就者の減少など
このようにその原因を見てみると、数年以内に金利が上がったら不動産は下がるだろうと一概に言えないのが分かります。
金利が上がると返済額が上がることで購入者のマインドを冷やし、返済比率が上がることで融資額が減少し、不動産価格は概ね下がっていきます。
このトレードオフの関係は私も認めるところです。
では、建築費はどうでしょう?
金利が上がって、円安が是正されても原材料高や原油高は海外事情や政治問題があり、それだけでは元通りにはなりませんし、賃金上昇や人手不足は国内の問題であり、金利とは直接の関係がありません。
ということは、、、建築費の高騰は当面続く可能性が高いと考えられます。
そんなことを考えながら新幹線内でクライアントとメールをしているところで、ちょうどグリーン席にある某雑誌の特集を見つけました。
読み進めてみると、建築従就者はピーク時の30%減、建築業者は20%減となっているデータがあり、私の感覚と一致していて安心しました。
さらに2024年問題も掲載されており、私は初めて2024年の勤務時間改革が建築業まで及ぶことを知りました。
同雑誌でも触れていましたが、建設業では専門職種が多岐にわたるため、すべてを1社で施工することは難しく、どうやっても多重下請け構造になってしまいます。
中には塗装などで天気に左右されたり、大型重機の回送日程に左右されたりする業種もあり、その工事が終わらないと次の専門業者の工事が着手できないこともあります。
仮に月単位の勤怠を徹底するとどうなるでしょう。
就業時間が来たからと言って作業途中でやめて材料が固まってしまったり、休みだからって1日のレンタル料が何十万円もする重機を動かさずに翌週まで現場に停めることになります。
大規模なマンションは勤怠管理が徹底されやすい大手建設会社が施行するので、工期が長くなって建築費はもっと高くなる。
でも、生産性を落として建築費が上がっただけなので、職人の手取りは上がらず、若者は建設業を敬遠するから、更に人手不足に…。そんな未来が見えてきてしまいます。
2023年09月05日 15時19分 - 早川